空の屋根に座って

感動は、残しておきたい。

【感想】隣の家族は青く見える

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 TVerで配信されていたので、観てみました。9話から視聴したので、経緯とかはなんとなーくでしか把握できませんでしたが、ドラマのクライマックスだけあってボロボロ泣きました……。

 というのも、主人公の奈々に感情移入してしまったからだと思います。妊活中ではないですが、現在の自分の心境とも重なる部分があって、なんだか他人に思えなかったです。生まない決断って、想像以上に重たくて……「一生後悔するかもしれない」っていう不安とか、「今ならまだ間に合うかもしれない」という焦りで心がザワザワします。

 このドラマのいいところというか、救いの部分は、とにかく主人公夫婦が素晴らしいという点だと思います。子どもがいようといまいと、お互いに思いやりがなければしんどいままなんですよね。なんか、母親という属性を手に入れれば変われるような気がしていたけど、そうではないのかなって気づかされたように思います。

 でも、思いやるがあまり(?)奈々が出て行ってしまうという悲劇。
「私はママになりたかったんじゃなくて、大ちゃんをパパにしてあげたかったんだと気づきました」

 もうね、号泣ですわ。ほんとこれ、と思いました。だって、パートナーに幸せになってほしいんですもの。昔は全く湧かなかったけど、諦めなきゃいけなくなった今だからこの気持ちがよく分かる。

 今からならほかの人と結婚して子どもができるかもしれない。別れよう。そう提案する奈々に、大器は顔をしかめます。

「オレがどうしたら幸せになるかって、なんで奈々が決めるの? 奈々にとって夫婦ってさ、単なる子づくりの相手? 奈々にとってオレって、その程度の存在だったの?」

 胸を打ちますよ。相手のことを思ってのはずが、相手の気持ちを無視してるなんて……。なんだこの両片思いは……(;へ:)

 そして、お義母さんから奈々に向けた言葉もグッとくる。

「嬉しいことや楽しいことは誰とでも共有できるけど、つらいことや悲しいことは一番大事な相手としか共有できないんじゃないの」

 敦子さーーーん!!(ガン泣き)思わず女優さんの名前が出てきてしまった(9話から見てるから役名が分からへんのや……)

 病める時も健やかなる時も。この「病める時」にどれだけ寄り添えるか。今まで大した波乱もなく生きてきたけど、この言葉は肝に銘じたいと思いました。

 

 このドラマで「コーポラティブハウス」なるものを初めて知りました。シェアハウスの戸建て版みたいなものなんでしょうかね?

 そこに住む人々も様々な形があって(あと二十年もすれば今よりさらに多様化してるだろうなぁ)、それぞれに抱えている悩みや、噛みしめる幸せが存在してるんだなぁと思いました。「誰が何をどう思うか」という自由は、すべての人に等しくあるべきだと思うけれど、生きにくいと感じる人が減る社会であってほしいものです。

 それと、やっぱり真島さんに目が行ってしまう。「麒麟がくる」や「おじさんはかわいいモノがお好き。」で好きになった俳優さんなので、「真島さん、こんなとこにも出てたんすかー!?」ってなりました。どうしてもチベスナを思い出してしまう。

【感想】検屍官

 ブログを立ち上げてみたはいいものの、感想を書ける気がしない……。

 せっかく読み終わった本があるのに(o´_`o)

 でも、3日坊主にするのも癪なので、とりあえず過去に書いた感想を掘り出してきました。

 パトリシア・コーンウェルさんの小説『検屍官』です。

 数年前に読んだ作品ですが、犯人も展開も覚えていなかったため(笑)再読しました。主人公のケイが最後のほうで犯人に襲われた記憶はあったのに、どうして肝心の犯人を忘れてしまったのでしょう。

 話が退屈だったから、というわけではありません。じつはこの犯人、ケイを襲うまで一切名前の出てこなかったモブだったのです。正体が明らかになったあとでさえ、名前は作中にほぼ出てきません。文体が主人公の一人称形式で、襲われた直後のショックがそうさせたのかもしれませんが(名前を出すのもおぞましい的な)、印象に残らなかったのはそういった理由なのかもしれません。

 ミステリを読むとき、少なからず読者は探偵になっているんだと思います。ルビのついた文に気をとられたり、登場人物の動作に辻褄が合っているか確認したり、「こいつが犯人か?」と片っ端から疑ってかかる人も多いのではないでしょうか。「作者はセンセーショナルに種明かしをして読者をあっと言わせたいに違いない」と勘繰って、味方サイドの人間が犯人なのではと妄想することもあるかもしれません。

 けれどもこの作品では、犯人はモブなのです(二度目)。もちろん、本をめくって最初に目にする「登場人物一覧」の中にいるわけもありません。舞台に役者を揃えているのに、最後の最後で「誰だお前?」みたいなやつが最も強烈にスポットを浴びているんです。これを書いてる今でさえ、もう名前を忘れてます。そのくらいの存在感なんです。

 物語の前半、身近に犯人がいると持論を展開する刑事マリーノに対し、ケイは

「現実には殺人なんてたいていがっかりするほど単純なものだわ。(中略)被害者とは面識のない犯人が、いきあたりばったりにやった犯行だわ」(106ページ抜粋)

 とコメントしています。ややもすれば、読者はミステリ小説にドラマを求めがちで、刑事、身内、同僚なんかが犯人であることを期待している節があります。その裏をかくような、けれど同類にのみわかる程度に香るように(ちなみに私は見逃してしまった)手掛かりを垂らしてあるんです。たしかに伏線ひとつもなかったら、意外性はあっても「それアリかよ~」って不満にしかならないですからね。お見事でした。

 シリーズものなうえ、少々長め。しかも途中に難解なプログラミング用語がでてきて置いてきぼり感を食らったりもしますが、読みごたえのある作品です。がっつりミステリを楽しみたい! って方には良いのではないでしょうか。